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画用紙に水彩絵具、時にクレパス、ペン、貼りり付ける異質な文字や写真があり、 多彩な技術があり、芸術の前でいつか身構えたりする。だがこれは愛嬌である。 四角い絵の中では、形も大きさも色調全体の不調和でさえご愛嬌となる。 デッサンがしっかりしていて、描かれたものの本質を伝えている。存在が確かで 見る者へ重さを実感させる力があること。本質を伝えるとか、存在が重いとかなん とも説明が要りそうな言葉だが、一言でいえば描かれたものが見る人の心に語り かけるか、否かにある。心を虜に、コミュニケーションが上手に出来るかにある。 絵とは、画家の頭でつくられたイメージを四角い平面に取り込んだもの、対象化 である。絵の中に画家の意図する宇宙がすっかり息づいていて、見る者へ対話 を迫るかどうかにある。画家の力量でつくられた世界が、四角い平面から飛び出 して見る側と対話を求めたら、絵の力によりそのときから見る人と対話が始まる。 画家は絵具を用いて絵を描く。自己の力量で描きたい宇宙を伝えようとしている。 筆先から生まれる絵具の芸術は四角い平面で表現される。具象や抽象や表現 は多彩となるが、所詮画家の力量、心を捕らえているものの対象化に過ぎない。 そう思ってみれば、一人一人の個性のままに個性の数だけ絵が出来ることとなる。 画家はわがままである。そして優柔不断である。その世界は絶え間なく次の思考 を求め変化していく、新しいもの新しい表現方法を試しては捨てていく。対象化に 飽きたとき絵は停まる、描きつくしたと意識しとき絵描きは絵を描かなくなる。だが、 今まで描きつくしたという画家の叫びを聞いたことはない。 芸術は満足を与えない、それが理由である。画家のみならず音楽家や彫刻家や 数多の創造的芸術運動は、自我の命ずるままに創造的活動に身をやつすもの、 おかげで、この町にいてこの町の美術館で芸術に触れることができる。なかでも この水彩画展は分かり易い、そして手が届きそうでいて、真似も出来そうにない。 作品の印象批評です、見る側のかってな権利です。 1 「水辺の詩」 川面に映る赤ちょうちん、そして紫がかった深みのある空がある。 その空のもとに連なる長い屋根、日陰となる屋根から落ちる影はペン書き風に 暗く彩色されており、まことにすがすがしくてリアルにできている。 川面と思える白い流れに赤い提灯が等間隔で映って見える、なんとも長閑だ。 2 「卓上生物」 ビンが立ち並ぶ、見事にすっくと白いテーブル上に立っている。 白いテーブルは当然、画用紙の下方に位置している。少し厚みがかっており、 画家(サトウさん)の説明によれば水彩の基本は背景を先に色付けをするが、 この作品は逆の手順だ。だから後から描き込んだ背景の色どりが鮮やかだと。 3 「M婦人像」 表情が豊かな婦人像だ、優しくて少々堂々としていてふくよかだ。 その生活と人格がないまじった奥の深さをもった顔をしている。着物をきちんと 着た両手は膝の上で丁寧に、重ねて合わせている。左手で抑えた右手がやや 窮屈そうなのがいけない、難癖をつければそういうこと、だが良い顔に違いない。 4 「阿蘇外輪山初秋」 空と接する外輪となる山の頂が悠然としている。山裾に立 つ家の一筆書き風な処理の仕方は手慣れてやや臭いかもしれない、と思い、 遠近法にのっとって全面下方・手前の風になびく稲藁風な塊が自然でよい。 近くと遠く、中間の盛り上がる林から溢れた水彩絵具の流れが惜しいーかな。 5 「エジプト物語」 ピラミッドやエジプト文書に多く書き残されたエジプトの民の姿 真横からとらえて、定法通りの描き方にこれはどこに工夫が、暫しの間は現代 の絵なのだろうかと考えた。両脇の裾部がが描かれており、それは居間に置か れたエジプト人を描いたもの、そのパピルス絵の模写ということのようである。 6 「散歩道」 散歩の楽しい図柄、犬や猫やお供がいて歩く姿はまさしく散歩であ る。背景に遠い古代のデザインが見える、古墳の壁画のような楽しい図柄が あるだけで、いきなり人間誕生にまで飛躍しかねない。案外とこの画家の考え ていることは、散歩にことよせた人間の歴史に触れたかったのかも、と思った。
by yilai3
| 2008-09-21 20:15
| まほろば
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